メモ帳

しらとりまな(てまり)のメモ帳です。

かさぶた

 

かさぶたを撫でるのが好きだ。

その匂いを嗅ぐことも。

  

おてんばな上に斜視があってよく転んだので

子どもの頃のわたしの体には、いつもどこかしらにかさぶたがあった。

 

膝小僧のかさぶたに指の腹を這わせて

これ以上強く触ると破れて血が出てしまうのではないかという

気持ちいいと痛いの境目を探す快感。

 

固まった、血と、体液と、埃と、汗と、死んだばい菌

かさぶたの放つ匂いが

気持ちを穏やかにしてくれた。

 

大きくなって

膝を擦りむかなくなると

脳みそに仕舞った記憶の中のかさぶた触るようになった。

 

目をつむって

一等大切にしている

「傷ついた思い出」を呼び起こして

これ以上思い出したら辛くて泣いてしまうだろうという

愛おしいと憎いの境目を探す。

 

そこいらでついた傷ではだめ。

大切な人につけられた傷でないとだめなのだ。

例えば

 

例えば

 

勿体無くて

話せないような

 

記憶の中の傷はいい

体にできたかさぶたは

いつか綺麗になって

柔らかい皮膚になってしまうけど

 

記憶の中の傷は

その人を想っているかぎり

なくならない。

 

 

 

 しらとり