海と毒の話:4
他人に触れるということが
あまり得意ではなくて
母親と手を繋ぐのも
たまに抱きしめられるのも
恥ずかしくて
うまくできなかった
死にたいとまでは思わないけど
蒸気になって消えてしまいたいって思うことない?
そう問いかけたのは
わたしだったか
あのこだったか
うん。思う。
そう答えたのは
わたしだったか
あのこだったか
わたしは今
なくなっていく二人のつま先を見ながら
お父さんの枕元にあったアロマディフューザーを思い出していた
とても細かい霧だった
どこも痛くはなかった
このまま消えて
この子の黒いサラサラのストレートも
わたしの茶色いパーマも
全部がなくなってしまっても
繋がった手だけは残っているような気がした